今月の言葉
釣りは教える
pp.5
発行日 1956年9月10日
Published Date 1956/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201256
- 有料閲覧
- 文献概要
何年振りかで船を沖に出して船釣りとしやれこんだ.同勢6人に船頭さん.波一つない海上は本当に静かで.鏡の上を滑るようなというのはこういう状態をいうのであろうと思いつつ,一寸手を海の中につけて故意にざわめきをつくつたりしてみてたのしみ乍ら沖にすすむ.目指す漁場にはすでに数船,思い思いに陣取つて熱心に糸をたぐつている.大型の客をのせた船の成績は,あまりはかばしくないらしいよ.中に2,3セキ小さな漁船に,2人か3人の本職の漁師をのせているのは凄い.殆んど100発中90位に糸の先に銀鱗をかがやかせて,カマスがあがつて来る.私達は船頭である本職にすつかり手ほどきをしてもらい,12尋位の深さに糸をたれてそれをクワツクワツと,リヅミカルにたぐつてみるが,一向にかからない.手を休めて私は隣りの船の専門家の手許をじつとみつめてみた.いとも無表情に,そして無ぞうさに機械的に両手を動かしているだけなのに,3回に2回以上は成功している.成程,ひき方にアクセントがいるらしい.そこで,私はまねてみる.小1時間位たつた頃,第一発がつれた.そうこうするうち,仲間の誰かもつれはじめたようである.ものの2時間位,コツを会得してアクセントをつけている間に20匹近くもとれて,同勢中随一になつた.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.