2色ページ ホメオステーシス入門・3
自然法則としての安定性と生体調節機構
畠山 一平
1
1北里大学医学部生物物理学
pp.352-355
発行日 1974年3月1日
Published Date 1974/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916976
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調節と制御
‘ホメオステーシス’という言葉が一般用語として理工系に使われるようになった半面,従来は生体に関しては使われなかった‘制御’という言葉が,調節に代わって用いられるようになった.‘生体制御’‘血圧制御機構’などという表現が‘生体調節’‘血圧調節’の代わりに用いられているが,どうやら制御という表現の方が理論的だったり解析的だったりするらしい.しかし生体制御は,生体を人為的に制御することである,と理解することもできる.例えば心拍動の制御とは,いわゆるペース・メーカーによる心拍動の人為的制御などであると理解する方が,伝統的な日本語のニュアンスに即しているようである.生体に本来備わっている機構には,調節という言葉を当てたほうがなんとなくしっくりするという人が多いであろう.
このような問題は日本語だけでなく,外国語にも存在している.英語におけるregulationとcontrolがその例である.医学においては一般に前者は生体本来のものについて,後者は人為的なものに使われている.特に一般的用語としてのcontrolには強制的な行動,例えば,支配するとか管理するとかいう意味あいがある.例えば‘regulation of temperature’といえば体温調節,‘control of temperature’というと液温とか室温とかの人為的制御を感じとる.
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