今月の主題 腎疾患診療の実際
治療
抗凝固療法
海津 嘉蔵
1
1産業医科大学・腎センター
pp.2626-2628
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222191
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腎疾患は,主として免疫学的機序で発症すると考えられているが,その進展・増悪に血液凝固線溶系の関与が想定されている.本稿でのテーマはその主旨で企画されたものであり,主としてその治療面から,腎疾患における抗凝固療法をとりあげたものであろう.
まず,腎疾患の増悪因子としての凝固線溶系というテーマに際し,まず4つの問題点を挙げなければならない.第1は,ヒト腎疾患に,凝固線容系の関与している事実が証明されているか?第2は,もし関与するならば,それを臨床的に反映する指標は何か?第3は,凝固線溶に対する抗凝固療法の適応とその効果判定は何か?第4は,どの抗凝固剤が有効なのか?ということである.何故これらの問題点をあげたかという理由は,病態生理学的に腎疾患の進展増悪の因子に血液凝固が関与するという事実の証明が十分でないまま,臨床では,1968年にKincaid-Smith1)らによって抗凝固療法がすでに実施され,その後,種々の抗凝固療法が試みられるに至っているが,その結果は一定でなく,15年近く経過した現在でもその有効性については賛否両論に分かれているからである.筆者は,その理由は前述の4つの問題点が解決されていないまま治療が行われたため,対象症例がばらばらで,効果判定法も決まっていなかったためであると考えている.
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