今月の主題 腎疾患診療の実際
ネフローゼ症候群
巣状糸球体硬化症—臨床的にどう微小変化群と鑑別するか,治療法はあるか
御手洗 哲也
1
,
板倉 行宏
1
,
川村 哲也
2
1埼玉医科大学総合医療センター・第4内科
2東京慈恵会医科大学・第2内科
pp.2604-2605
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222183
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巣状糸球体硬化症(focal glomerular sclerosis,FGS)は,光顕上多くの糸球体には変化を認めないが,一部の糸球体に分節状硬化を認める腎病変の病理形態学的な診断名である.このような糸球体病変を認める腎疾患としては,一次性糸球体疾患としてネフローゼ症候群を呈するもののほかに,妊娠中毒症による腎障害,高血圧性腎硬化症,逆流性腎症,日本ではあまりみられないが,Heroin中毒による腎障害などがある.しかし,一般的には,単にFGSと言った場合には,一次性糸球体疾患としてネフローゼ症候群を呈するものを指している.
このようなFGSは,1957年,Richらがネフローゼ症候群患者の剖検例から,lipoid nephrosis様でありながら皮髄境界部から皮質表層に糸球体硬化が進展する特異な病態があることを記載したことから歴史が始まり,果たしてこのFGSが微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change nephrotic syndrome,MCNS)のより重症型といった亜型なのか,それとも独立した疾患なのかという問題も古くから論議されているが,まだ明確にされていない.
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