今月の主題 腎疾患—最近の展開とトピックス
糸球体腎炎:臨床と診断
巣状糸球体硬化症(FGS)
酒井 紀
1
,
金井 達也
1
1東京慈恵会医科大学・第2内科
pp.1746-1747
発行日 1985年10月10日
Published Date 1985/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219954
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巣状糸球体硬化症(focal glomerulosclerosis;FGS)の病像は,Rich(1957年)がlipoid nephrosisと考えられた小児の剖検例のなかに,旁皮髄境界の糸球体から皮質表層に波及していく巣状糸球体硬化像を認めた20例に,糸球体硬化を伴うlipoid nephrosisの亜型と記載してから注目されるようになった.Hayslettはその後,本症を"malignant course"をたどるlipoid nephrosisの特殊病型と報告したが,1970年Churgらは本症をlipoid nephrosisとは別個に扱い,steroid抵抗性を示し,多くは腎不全へ進展する独立疾患と定義してfocal glomerulosclerosisと名づけた.
FGSはこのように特異的な巣状分葉性の糸球体硬化像を呈し,臨床的にも難治性のネフローゼ症候群を呈する疾患と考えられてきたが,しかし本症の診断には,腎生検法という制約された材料で巣状病変を診断するには限界があること,さらに,FGSの病像が他の腎疾患でも認められることなどから,本症の疾患概念に混乱が認められる.以下,一次性ネフローゼ症候群のなかで形態的にfocal segmental hyalinosis and sclerosisを呈する症例に限定して,FGSの病態像について述べることにする.
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