増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック
Ⅴ 腎疾患
疾患の解説
巣状分節性糸球体硬化症
谷山 佳弘
1
1近畿大学医学部腎臓内科
pp.478-480
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201571
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病態
巣状糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)は微小変化型ネフローゼ症候群(476頁参照)と類似の発症様式・臨床像を呈するが,多くはステロイド抵抗性の経過をとり,末期腎不全に至る率も高い.初期には大部分の糸球体に病的変化を認めない.多数の糸球体に均一な変化をきたすことはなく,一部の(主として傍髄部領域の)糸球体において「巣状(focal)」かつ「分節性(segmental)」に硬化を認めるという病理形態学的特徴を有する(後述).
この硬化病変は病期進行とともに拡がっていく.典型的なネフローゼ症候群を発症する原発性(一次性)FSGSのほかに,肥満関連腎症あるいは逆流性腎症など,形態学的に全く同じような組織像を示す続発性(二次性)FSGSの存在もよく知られている.本症で腎不全に至った腎移植症例のなかに,移植直後からネフローゼ症候群の再発があり,なおかつこれが血漿交換療法にて軽減するという現象が知られており,少なくとも一部のFSGSでは発症において糸球体での蛋白透過性を亢進させる何らかの液性因子の存在が想定されている.近年,血清中のsoluble urokinase receptor(su-PAR)がFSGS患者において有意に高値を示し,かつ治療経過と連動して変化することが報告されており,この液性因子である可能性が議論されている.
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