増刊号 診断基準とその使い方
IX.腎・尿路
1.無症候性血尿・蛋白尿
北島 武之
1
1東京慈恵会医科大学・第2内科
pp.2130
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222022
- 有料閲覧
- 文献概要
■診断基準(表)
■疾患概念と疫学
一般に自覚症状を伴わない血尿や蛋白尿,あるいは両者を無症候性血尿・蛋白尿と呼んでいる.わが国では学校や職域での集団検尿が普及し,このような機会に発見される蛋白尿や血尿のことをchance蛋白尿/血尿とよんでいるが,これが無症候性血尿・蛋白尿と同義語のように用いられている.しかし,この場合は発見の動機をもって表現したものなので,厳密には同義語とはいい難いが,わが国の現状では大きな支障はない.
厚生省特定疾患「進行性腎障害」調査研究班(班長:東條静夫)が昭和60年の1年間に入院した腎疾患患者を対象に全国アンケート調査を行ったところ,chance蛋白尿/血尿患者の実態は,内科系施設で2,926名の腎疾患入院患者のうち559名(19.1%),小児科系では同じく210名中88名(41.9%)であった.これらの原発性糸球体疾患の占める割合は,内科系が1,078名(36.8%),小児科系で146名(69.5%),さらに,このうちchance蛋白尿/血尿は541名(50.1%)および83名(56.8%)であった.原発性糸球体疾患のうち非ネフローゼ群についての検討で,内科系では293名(45.9%),小児科系20名(19.0%)がIgA腎症であった.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.