増刊号 診断基準とその使い方
V.内分泌
35.TSH不応症
小西 淳二
1
1京都大学医学部・核医学科
pp.1934
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221959
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■疾患概念と疫学
血中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)が上昇しているにもかかわらず,甲状腺細胞の反応が不良のため甲状腺機能低下症を呈するものは広く原発性甲状腺機能低下症と呼ばれている.この中には種々の甲状腺障害が念まれるが,それらのうち,TSHの受容機構における異常のためにその作用が発現しない,もしくはその作用発現が抑制されているものをTSH不応症と定義する.これには,①TSH受容体そのものの異常によるもの(先天性)と②TSH受容体抗体などによる後天性不応症の2つが考えられる.このうち①については偽性副甲状腺機能低下症I型に伴うものが知られ,Gs蛋白の欠損によるものと考えられている.これに対し,②は1987年に初めて筆者らが報告した症例1)以来,世界的にその存在が知られるに至った.以下,この後天性TSH不応症について述べるが,現在明らかにされているのはTSHの甲状腺刺激作用をブロックする「阻害型TSH受容体抗体によるTSH不応症」である.
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