増刊号 診断基準とその使い方
V.内分泌
7.TSH単独欠損症
宮井 潔
1
1大阪大学医学部・臨床検査診断学,中央臨床査部
pp.1888
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221931
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■疾患概念と疫学
下垂体前葉からは甲状腺刺激ホルモン(thyroidstimulating hormone;TSH)のほか,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),成長ホルモン(GH),乳腺刺激ホルモン(PRL),性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH),黄体形成ホルモン(LH)が分泌されている.このうち一種類のホルモン分泌のみが欠如する疾患を単一前葉ホルモン欠損症と呼び,TSHの分泌のみが欠如した場合がTSH単独欠損症(isolated TSH deficiency)である.TSH欠如のため,2次性甲状腺機能低下症(secondaryhypothyroidism)を来す.
頻度は低く,文献報告は20例余り,わが国の厚生省研究班で調査した限りでは10数例が判明したのみである.このうち6症例が先天性で,3家系中の4症例は,TSHβ鎖遺伝子の同一の点変異が原因であることが最近の著者らの研究で明らかとなった.
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