技術解説
TSHによるクレチン症スクリーニング検査
宮井 潔
1
,
大浦 敏明
2
,
藪内 百治
3
,
川島 実
4
1大阪大学,中央臨床検査部
2大阪市立小児保健センター
3大阪大学,小児科
4大阪血清部
pp.837-843
発行日 1978年8月15日
Published Date 1978/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914832
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甲状腺ホルモンは生体内のあらゆる代謝に関係しているため,このホルモンが胎生期から欠如すると,身体の発育遅延と知能低下を来す.これがクレチン症で,先天性甲状腺機能低下症とほぼ同義語として用いられている.本症の知能低下は非可逆的で,精神薄弱児となる可能性が大きいため,社会的にも重大な問題である.しかしKleinら1)の研究によって,新生児期に発見して甲状腺ホルモンを投与すれば,この知能低下がかなり防げることが分かって以来,早期診断・早期治療が叫ばれるようになった,しかし典型例は別として大部分の例では,その症状だけから発見することは非常に困難である.
そこでフェニールケトン尿症(PKU)など他の先天性代謝異常疾患について行われているように,出生児全員について検査をし,その中から異常児を見いだそうとする,いわゆるマススクリーニングが注目されるようになった,一般的に言ってマススクリーニングの対象となるには,表1のような条件が満たされなければならない.クレチン症では,PKUなどと同様あるいはそれ以上にマススクリーニングの対象になりうることが分かるであろう.
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