増刊号 これだけは知っておきたい薬の使い方
Ⅶ 血液疾患治療薬
出血傾向
180.血栓性血小板減少性紫斑病の薬物治療
中野 優
1
,
外山 圭助
1
1東京医科大学・第1内科
pp.2202-2203
発行日 1987年9月30日
Published Date 1987/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221300
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血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,全身の微小血管系(細動脈および毛細血管)に血小板血栓が多発し,血小板減少性紫斑病,微小血管障害性溶血性貧血,多彩な神経症状,腎障害および発熱を主要5徴候とする予後不良の稀な疾患である.血小板血栓形成の機序は未だ不明であるが,現在では,①血管内皮障害説と,②一次性血小板凝集説が有力である.前者では,免疫複合体による障害や血小板凝集阻止因子であるプロスタサイクリン(PGI2)の産生障害が,また後者では,血小板凝集因子(PAF)の存在やPAF阻害因子(PAFI)の欠如などが推定されている.最近,PAFとして第Ⅷ因子のvon Willebrand因子(ⅧvWF)のlarge multimerが,PAFIとしてⅧvWF depolymeraseなどが注目されている.
さてTTPは急激に発症し,3ヵ月以内に約80%が死に至る疾患であるとされてきたため,治療に際して投与薬剤の有効性を十分に評価するだけの時間的余裕もなく,真に有効な薬物療法の確立を目的とした多施設でのrandomized,prospective studyも困難であることから,もっぱら症例毎に主治医の判断によって,副腎皮質ステロイドを中心とした多剤併用療法が経験的に行われてきた.したがって,使用薬剤の投与量,投与方法もまちまちで,また個々の薬剤の選択根拠も希薄であったといわざるを得ない.
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