増刊号 これだけは知っておきたい薬の使い方
Ⅴ 消化器疾患治療薬
肝疾患
141.慢性肝炎の薬物治療
金井 弘一
1
1浜松医科大学・第2内科
pp.2096-2097
発行日 1987年9月30日
Published Date 1987/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221261
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慢性肝炎の薬物療法は3つに大別される.第1は肝の代謝改善を目的とする肝庇護療法で,肝水解物やSH化合物などがある.第2は肝の炎症を沈静化しようとするもので,グリチルリチンや副腎皮質ステロイドがこれに相当する.第3はインターフェロンをはじめとする抗ウイルス薬による抗ウイルス療法である.
筆者らはこれらの治療法の選択を以下のように行っている.まず自覚症状がなく肝機能も安定している(GPT100単位以下)患者には,原則として投薬せずに生活指導を行って経過を観察する.慢性肝疾患の外来におけるfollow upスケジュールを表に示す.しかし肝障害の軽度な慢性肝炎であっても,患者の自覚症状や不安感が強く,投薬を希望する場合には,肝庇護薬や漢方薬を投与する.つぎにGPT値が長期にわたって150〜200単位あるいはそれ以上で持続する症例に対しては,肝の炎症を沈静化させ,トランスアミナーゼの改善をはかる.トランスアミナーゼの改善には,グリチルリチン製剤の静注が最も効果的と考えられる.一方,抗炎症作用を目的とする副腎皮質ステロイドは,ルポイド肝炎など自己免疫性肝炎では第1選択となるが,その他の慢性肝炎では原則として投与しない.
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