今月の主題 感染症の動向と抗生物質
院内感染のマネージメント
骨髄移植と感染症
雨宮 洋一
1
1自治医科大学・輸血部
pp.1680-1682
発行日 1986年10月10日
Published Date 1986/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220562
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骨髄移植の感染症は,移植経過に伴う生体防御機構の破綻の様相から,3つの時期に特徴づけられる.すなわち,移植後30日までの好中球減少期に相当する初期感染期では,グラム陰性桿菌,真菌,HSV(herpes simplex virus)が主体で,白血病の寛解導入時の感染症に類似している.次に,好中球数は回復しているものの,レシピエント固有の免疫能がすでに消失し,生着したドナーの造血幹細胞に由来する免疫担当細胞が未だその機能を発揮でき得ない,患者にとって免疫能の谷間であるところの移植後30日から100日までの中期感染期は,CMV(cytomegalovirus),Pneumocystis carinii,TBI(total body irradiation)などによる間質性肺炎の合併が問題になる.この時期は急性GVHD(graft versus host disease)合併期に相当する.後期感染期は移植後100日以降で,移植後の細胞性免疫の異常による影響が強い慢性GVHD合併期に相当し,VZV(varicella zostervirus)などのウイルス感染や,肺炎球菌,連鎖球菌などのグラム陽性菌感染症の合併を特徴とする.
骨髄移植の感染症の背景には,程度の差こそあれ免疫不全が存在し,それは移植後の経過日数と,慢性GVHDの存在の有無に影響される.
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