講座 図解病態のしくみ 内分泌代謝疾患・8
甲状腺腫瘍
斎藤 公司
1
,
山本 邦宏
1
1自治医科大学・内分泌代謝科
pp.1440-1445
発行日 1986年8月10日
Published Date 1986/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220503
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甲状腺腫瘍は臨床的にはそのほとんどが非中毒性結節性甲状腺腫として扱われるが,その内訳は表1に示すように多種に亘っている.このうち良性腫瘍である腺腫が最も多く,悪性腫瘍でも分化型の腺癌(乳頭腺癌,濾胞腺癌)が多い.これらの癌は成長が遅い.したがって,腫瘍全体の比較でも癌のみの比較でも甲状腺の腫瘍は,他臓器の腫瘍に比して予後が良い.このことは甲状腺腫瘍の1つの特徴であり,ありがたいことであるが,甲状腺腺腫と甲状腺濾胞腺癌との鑑別診断が病理組織学のレベルでも困難な場合があることと裏腹である.こうした中で頻度は少ないが,扁平上皮癌,未分化癌,悪性リンパ腫が時にみられ,これらは悪性度が非常に高いことを念頭に置いておくと良い.
内分泌腺腫瘍という観点からは,ホルモン産生腫瘍に興味が持たれるが,甲状腺以外の内分泌腺腫瘍と異なり,甲状腺ではホルモン産生腫瘍が非常に少ない.これも甲状腺腫瘍のもう1つの特徴であろう.こうした中で甲状腺髄様癌は,カルシトニンを含めて種々の活性物質を分泌しうる腫瘍であることに加えて,いわゆる多発性内分泌腺腫瘍症の一部を成すものであり興味が持たれる.
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