今月の主題 体液・電解質補正の実際
病態と輸液
呼吸不全と輸液
横山 剛
1
1警友総合病院・内科
pp.994-995
発行日 1986年6月10日
Published Date 1986/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220408
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呼吸不全には,動脈血02分圧が60Torr以下の低酸素血症のみを呈する群と,低酸素血症に加えて,動脈血CO2分圧が45Torr以上の高炭酸ガス血症を示すものとの2群に分けられている.低酸素血症を呈するいわゆる1型呼吸不全は,肺癌,喘息,肺炎,肺線維症などのほか,呼吸器以外の疾患たとえば肝硬変症,脳卒中などでもみられ,日常臨床では最もしばしば遭遇する病態である.これに対してCO2蓄積を伴うII型呼吸不全は,肺気腫,慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患(COLD)に多くみられ,急性のCO2蓄積はこれらCOLDの急性悪化のほか,重症喘息,重症肺水腫などでみられるものである.
したがって呼吸不全の水電解質異常は,低酸素血症のみを呈する場合と,CO2蓄積すなわち呼吸性アシドーシスをきたしている場合とで明らかに病態が異なるものである.低酸素血症あるいは高炭酸ガス血症が,水電解質代謝にどのような影響を及ぼすかは興味あるテーマであるが,いまだ不明な点が多い.さらに昨今のように人工呼吸器の使用が日常化されてくると,その長期使用による水分代謝の異常もゆるがせにできない問題である.これらの点について現在の知識を簡単に述べてみたい.
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