臨時増刊特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第3集
Ⅷ.血液化学検査
107.血清鉄
黒川 一郎
1
Ichiro Kurokawa
1
1札幌医科大学付属病院・検査診断部
pp.2358-2359
発行日 1984年12月1日
Published Date 1984/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219428
- 有料閲覧
- 文献概要
血漿(清)鉄濃度は,鉄の吸収,網内系,骨髄への移行,組織血漿間の移動などのバランスの上に立ち,ほぼ一定の値を維持している.吸収は食餌中の鉄含量,摂取量(1日1mg),小腸から同時に吸収される物質による促進(グルタミン酸,アスパラギン酸,VC),競合(メチオニン,プロリン,セリン,リン酸化合物)作用を受ける.体内総血清鉄量は3,500mgであるが,諸臓器間の移行量は大きく,総量21mg分が1日で体内を移動する.十二指腸,空腸上部から吸収されたFe⧺は酸化され,Fe⧻(第二鉄イオン)として血中に移行するか,腸上皮細胞のアポフェリチンと結合し,フェリチンとなり,細胞内にとどまる.Fe⧻となって血漿中に入ると,トランスフェリン(β1グロブリン分画)と結合し主に骨髄の赤芽球に供され,ヘモグロビン合成に用いられる.それ以外のFeは,非特異的に諸臓器内に入ってしまう.血清鉄は諸臓器の機能,吸収・排泄のバランス,人間の成長,日内変動,トランスフェリン量,思春期にはじまる性差,疾病などに影響される.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.