臨時増刊特集 問題となるケースの治療のポイント
VII.腎疾患
問題となるケースの治療
155.高齢者ネフローゼ症候群の治療上の問題点
加藤 暎一
1
Eiichi Kato
1
1慶応義塾大学医学部・内科
pp.2430-2431
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218696
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症例
81歳の男子医師,特記すべき既往なし.昭和46年1月下旬より感冒様症状出現,2月初めより浮腫,蛋白尿を認め,自分でネフローゼ症候群(以下ネ症と略)と診断し,副腎皮質ホルモン6錠を服用しながら診療を続けるも改善なく,浮腫増強,2月上旬当院内科に入院,食事療法および安静のみにて10日間で15kgの体重減少を伴う浮腫の改善を認めた.蛋白尿は3.5g/日から0.9g/日へ,血清コレステロールは553mg/dlから270mg/dlへわずか3週間で減少して退院した.入院中時々回盲部痛を認めたが,X線上軽度通過障害のみ.その後約1年間はほぼ完全寛解に近い状態.昭和47年4月下旬より再燃を認め,5月よりステロイド(PSL30mg)投与を開始,再び蛋白尿の減少がみられた.同年10月下旬回盲腫瘤が発見され,11月下旬死亡した.剖検で盲腸原発の腺癌およびその肝転移,周囲組織への浸潤,膿瘍形成がみられた.腎は両側それぞれ180gに腫大,糸球体は電顕的検索を行っていないが,HEおよびPAM染色でみる限りminimal changeで,その他軽度の細小動脈硬化と,末期に加わったと思われる急性尿細管壊死像がみられた.
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