今月の主題 肝硬変と肝癌
肝硬変の代謝異常とその対策—肝癌との関連から
糖質
武田 和久
1
Kazuhisa Taketa
1
1香川大学・保健管理センター
pp.1508-1509
発行日 1983年9月10日
Published Date 1983/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218420
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肝硬変における糖代謝異常の特徴
生体の糖代謝にとって最も重要なことは血糖,すなわち血中グルコース濃度の恒常性の維持であり,肝がその中心的役割を演じている.したがって,肝障害の程度および病態によって種々の糖代謝異常を生じるが,その特徴は一般的には飢餓時低血糖,糖負荷後過血糖といわれている.しかし,肝硬変においては早朝空腹時血糖は正常かやや高い例が多く,低血糖を示す例は稀であり,糖負荷後耐糖能の低下を示す例が急性および慢性肝炎に比し高頻度(70〜90%)にみられる.肝硬変の成因別の差(肝炎後,アルコール性など)についての特徴は明らかでないが,糖負荷後過血糖を示すにもかかわらず血中インスリン(IRI)値の過剰遅延反応がみられる点において,インスリン依存性の糖尿病とは明らかに区別される1-3).
このように血中インスリンの高値があるにもかかわらず血糖値は高く,末梢組織でのインスリン抵抗性によることが示されている2).肝硬変においては血中の高グルカゴン値もみられるが,このグルカゴンの増加はインスリン抵抗性の原因となりえないことがPCシャント術前後での血糖,グルカゴン値の比較4,5),ソマトスタチン注入下でのインスリン,グルカゴンの影響をみた実験成績6)から明らかにされている.
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