境界領域 転科のタイミング
急性胆嚢炎
牧野 永城
1
Eiki Makino
1
1聖路加国際病院・外科
pp.657-660
発行日 1983年4月10日
Published Date 1983/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218240
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わが国ではすべての急性胆嚢炎を,診断がつき次第,早期手術の対象としてすぐ外科に回すという内科医は,おそらく非常に少数,または皆無なのではなかろうか.実は,欧米とくにアメリカでは急性胆嚢炎の早期手術の是非に関する論争が1940年後半から1950年代にかけて盛んに行われ,現在では多少の意見の相違はあれ,急性胆嚢炎は診断がつき次第,体液の補充がついたらなるべく早期に手術するという意見が外科医の間では支配的なのである.わが国ではとくにこの問題に関して盛んな論議が学会を賑わしたというようなことは聞いていない.
もともと欧米でのこの論争は3派に分かれて始まった.それは急性胆嚢炎は急性虫垂炎と同様に救急手術の対象とすべしというのと,元来内科的治療によく反応するのだから,原則的には内科疾患として扱い,合併症を起こす,または起こす危険のある者だけ外科に回るという両極端の意見があり,そのほかに中間的立場を占めるものとして,一たんは内科的治療で2〜3日から長くて数日まで様子をみ,もし治療に反応する気配のない症例は手術し,反応する症例は内科的に治し,胆石があればその処理は後日ゆっくりやればよいという考えの3つである.
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