臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
XI.感染症
結核性髄膜炎 VS ウイルス性髄膜炎
高木 繁治
1
,
篠原 幸人
1
Shigeharu TAKAGI
1
,
Yukito SHINOHARA
1
1東海大学医学部・神経内科
pp.2096-2097
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216892
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なぜ鑑別が問題となるか
われわれが日常の臨床で遭遇する髄膜炎の多くはウイルス性髄膜炎である,本症の予後は本質的には良好で,特殊な治療を要しない.発熱,頭痛,食思不振,嘔気を訴え,髄膜刺激症状を認あ,髄液検査で水様透明,リンパ球増加があり,培養で病原菌が証明されなければウイルス性髄膜炎として対症的治療のみで経過観察しがちである.しかし,これらの自他覚所見は結核性髄膜炎の初期の症状として,なんら矛盾するものではない.
結核性髄膜炎は早期診断がきわめて重要である.死亡例は発症後1ヵ月以内に死の転帰をとることが多く(Weiss,1961),薬剤投与開始時の意識レベルが予後と密接に関係することを考えれば,この重要性は理解できよう.髄液塗抹標本より抗酸菌を証明できることは少ない.また髄液中の結核菌培養による確定診断は時間を要し,治療開始時の判断材料とはなりえない.定型的な経過をとる例でも早期診断は必ずしも容易ではなく,非定型的な臨床症状,髄液所見を呈する例では,さらに診断が困難ではあるが,数多いウイルス性髄膜炎患者の中に潜む結核性髄膜炎患者をいかに早く発見し,治療を開始するかが最も重要である.
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