臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
XI.感染症
伝染性単核症 VS サイトメガロウイルス感染
浦野 隆
1
Takashi URANO
1
1済生会中央病院・小児科
pp.2092-2093
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216890
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なぜ鑑別が問題となるか
末梢血中に異型リンパ球が増加する疾患には種種のものが考えられるが,異常増加する場合にはEBウイルスとサイトメガロウイルス感染が二大原因としてあげられる.異型リンパ球が10%以上にみられる場合,伝染性単核症(単核球様症候群)と呼ぶべきものであるが,この伝染性単核症の原因としてEBウイルスが確立されている1).しかし,病原をこれだけに限定しえず,Evansも述べているごとく2),いわゆる単核球様症候群(mono syndrome)のうち90%以上のものはEBウイルスによって起こるが,残る5〜7%がサイトメガロウイルスによって,また1%以下ではあるがトキソプラズマによっても発症する.しかも近年,臓器移植や腎透析,新鮮血輸血などが活発に行われるようになって,サイトメガロウイルスによる単核球様症候群が増加する傾向にある.このため,こうした症例の病原的鑑別が問題となってきたしだいである。本来,両ウイルスはともにヘルペス属のものであるが,感染による臨床像はそれぞれかなり趣きを異にしている.とくにサイトメガロウイルス感染の臨床像は多彩であって,単核球様症候群はその一分症であり,むしろ先天感染,新生児期感染が注目されている.本ウイルスの浸淫度が大きい点,病原性が弱いなどの理由からか,成人の初感染発症例が少なく,多くの例が不顕性感染におわっている.
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