臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
V.内分泌疾患
クッシング病 VS クッシング症候群
清水 直容
1
Naokata SHIMIZU
1
1帝京大学医学部・第1内科
pp.1954-1955
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216828
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なぜ鑑別が問題となるか
クッシング病はクッシング症候群(広義)のなかの1つの病態であるが,本稿では下垂体性ACTH過剰を原因とするものをクッシング病(以下「ク」病),それ以外(副腎腫瘍,異所性ACTH産生腫瘍および原発性副腎過形成)のうち副腎腫瘍によるもののみをクッシング症候群(以下「ク」症候群)として述べる.異所性ACTH産生腫瘍およびとくに原発性副腎過形成は珍しいので簡潔にするために省略するが,異所性ACTH産生腫瘍が存在する可能性は常に念頭におかなければならない.
「ク」病と「ク」症候群を鑑別する必要性は,治療およびその後の経過が異なるからである.「ク」病では原因となる病変が視床下部・下垂体にあるので,治療の標的は第一次的に下垂体に向けられるのに対し,「ク」症候群では副腎腫瘍の摘出が手術可能なかぎり唯一の選択的な治療であり,副腎腫瘍(多くは腺腫)が摘出され,その対側副腎(萎縮している)の機能に十分注意して1〜2年の経過をみれば,「ク」症候群は完全に治癒する疾患である.「ク」病の治療については近年経蝶骨洞下垂体腺腫摘出術(Hardy法)により,下垂体腺腫の摘出が多く行われるが,その長期予後の成績は検討中であり,下垂体照射,薬物療法,副腎に対する手術あるいは薬物療法もなお症例によって有用である.
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