臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
V.内分泌疾患
神経性食欲不振症 VS 下垂体前葉機能低下症
末松 弘行
1
Hiroyuki SUEMATSU
1
1東京大学医学部付属病院分院・心療内科
pp.1956-1957
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216829
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なぜ鑑別が問題となるか
神経性食欲不振症1)(Anorexia nervosa,以下Anと略す)は,精神的な原因で食べなくなって,ひどくやせる疾患であるが,二次的な視床下部下垂体の機能的な障害によって,内分泌機能異常を呈することがある.一方,下垂体前葉機能低下症2)(Simmonds病,以下Siと略す)は,分娩時に起こった大出血のために下垂体が壊死に陥ったり(Sheehan症候群),腫瘍などによって下垂体に器質的な障害があるために,内分泌機能異常を示す疾患である.Simmondsが最初に報告した症例は,無月経や悪液質などの症状がある婦人であった.したがって,重症例では,臨床症状にしても内分泌機能検査所見にしても,両者は同様の異常を呈することがあるので鑑別が問題になる.
Anで,内分泌機能異常のみを注目されて,Siと誤診されて不必要なホルモン補充を受けていた症例があった.この例では,有害とも考えられるステロイドなどを用心しながら中止し,精神療法によって摂食し始めて,体重が回復したところ,内分泌機能も正常化した.また,軽度の下垂体機能異常があった男子青年で,受験に失敗して食欲不振であったために,Anとして経過をみられているうちに,脳圧亢進症状がでてきて,脳腫瘍によるSiであることがわかった症例もある.
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