今月の主題 感染症—治療の実際
臓器感染症の治療法
細菌性心内膜炎
雨宮 武彦
1
Takehiko AMEMIYA
1
1済生会兵庫県病院・内科
pp.1534-1536
発行日 1980年10月10日
Published Date 1980/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216713
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はじめに
細菌性心内膜炎(bacterical endocarditis)とは,心内膜とくに弁膜,時には心臓に近い大血管内膜に細菌集簇を含む病巣があり,菌血症をはじめとして血管栓塞,心障害など多彩な臨床症状を呈する自然治癒傾向のない全身疾患である.なお真菌などによる心内膜炎を含め,一括して感染性心内膜炎(infective endocarditis)とも呼ばれる.
経過上,急性細菌性心内膜炎(ABE)と亜急性細菌性心内膜炎(SBE)とに分けられる.頻度はSBEがはるかに多い.ABEは数日より数週の経過であり,ほかの感染巣よりひきつづき急激な発症,重篤な経過で,臨床症状は敗血症の像をとる.無疵な弁を侵し,病理像はE. ulcerosaである.起炎菌は黄色ブドウ球菌のような毒力の強い菌が多い.これに反しSBEは通常基礎に心疾患があり,発症進展は緩慢で経過は2〜3カ月以上,弱毒菌が主で緑連菌が大半を占める.心内膜には細菌集簇巣が含まれる器質化血栓(疣贅verruca)がみられ,E. ulceropolyposaである.しかしABE,SBE両者には根本的な相違はなく,もちろんどちらともいえない症例もある.要するに生体の防御力と起炎菌の毒力の相関により決まる.
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