今月の主題 慢性肝炎をめぐる諸問題
成因からみた慢性肝炎
慢性アルコール性肝炎
池上 文詔
1
,
打越 敏之
2
Fumiaki IKEGAMI
1
,
Toshiyuki UCHIKOSHI
2
1関東逓信病院・消化器内科
2関東逓信病院・病理学検査科
pp.888-889
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216556
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大酒家にみられる肝病変として,従来より脂肪肝,アルコール性肝炎,肝硬変が知られている.近年は脂肪肝から肝硬変への移行が疑問視されるようになり,アルコール性肝炎がこれにかわる病変として注目されている.アルコール性肝炎は,以前は急性アルコール性肝炎といわれた病変で,Mallory体を高頻度に認め,多核白血球浸潤を伴う肝細胞壊死が中心となる急性炎症と,中心帯の線維化と脂肪化を伴う病変と理解され,1974年アカプルコにおけるIASLの定義1)が現在一般に容認されている.しかしこのアルコール性肝炎は欧米においてはアルコール性肝障害患者のかなりの例に認められるのに反して,わが国では施設によって差はあっても一般にはアルコール性肝疾患の1/4以下にしか認められないとされている2).ではわが国における大酒家の肝病変の主体を占め,肝硬変の前段階として存在する病変はどのようなものであろうか.このきわめて単純な疑問が,本院のような職域病院において日常肝生検の組織学的診断に従事するうちに生じてきた.1975年以前には本院においては,大酒家の肝生検組織標本に対して,その大多数を慢性肝炎非活動型と診断していた.しかし,1975年より犬山分類あるいはヨーロッパ分類によるウイルス性慢性肝炎と明らかに異なる組織学的特徴を有するアルコール性肝障害に対して,「慢性アルコール性肝炎」なる診断名を使用するようになり,日本肝臓病学会にも発表し3),現在にいたっている.
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