今月の主題 慢性肝炎をめぐる諸問題
成因からみた慢性肝炎
原発性慢性肝炎
志方 俊夫
1,2
Toshio SHIKATA
1,2
1日本大学医学部・第1病理
2長崎大学熱帯医学研究所・防疫
pp.886-887
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216555
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はじめに
原発性慢性肝炎という概念はドイツ学派により古くからとなえられていた考え方である.われわれが観察する慢性肝炎の症例の約半数は急性肝炎の既往がない.このような症例がどのようにして発症したのかということは昔から問題にされていた.たとえばわれわれの気付かない無黄疸性の急性肝炎の時期があったのではないかという議論である.また一方B型肝炎ウイルスが見出されてから,そのキャリヤーの存在が明らかになった.そしてそのような症例の肝生検を行うと最少限の慢性肝炎から,かなり強い病変まで見出されたのである.家族性に認められるキャリヤーで20歳台くらいで慢性肝炎の症状がはっきりするものがあり,また急性肝炎様のシューブを起こす症例もあることも明らかになった.
最近日本の臨床家は成人がB型肝炎ウイルスに感染すると,急性肝炎を起こすが,この急性肝炎はよくなおり,ほとんど慢性肝炎に移行することはなく,B型肝炎ウイルスもクリヤーされる.一見急性のB型肝炎から慢性肝炎に移行したようにみえる症例は,実はキャリヤーの急性発症で,その発症初期にHBc抗体をはかると,すでにその抗体価は高く,キャリヤーの急性発症であることが明らかになると主張している.
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