トピックス
免疫寛容状態の誘導
場集田 寿
キーワード:
接着分子
,
トレランス
,
costimulatory signal
Keyword:
接着分子
,
トレランス
,
costimulatory signal
pp.897
発行日 1992年8月15日
Published Date 1992/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901180
- 有料閲覧
- 文献概要
移植免疫における免疫寛容(immunological tolerance)状態とは移植片に対する拒絶反応が特異的に消失している状態をさす.一般に移植片はその臓器により生着に差異があると言われるが,種種の報告を見るとある臓器が移植後生着し,さらに移植した皮膚も拒絶されずに生着した場合,免疫寛容が誘導されたと判断しているものが多い.
さてその誘導方法において現在注目されているものに接着分子に対するモノクローナル抗体がある.最近マウスを用いてその異所性心移植で,抗接着分子抗体使用によるトレランス誘導の成功が2編報告されている.Isobe1)は抗ICAM-1抗体(YN 1/1.7)と抗LFA-1抗体(KBA)を各50μgずつ6日間投与,Chen2)は抗CD 4抗体(YTS 177.9.6)と抗CD 8抗体(YTS 105.18.10)を各1mgずつ22日間併用投与して,主要組織適合抗原の全く異なる系にトレランスを誘導している.しかもChenはPVGラットからCBAマウスという異種間の移植でもトレランスが誘導できたという画期的なものである.Isobeはトレランスを誘導したマウスの脾細胞を用い細胞障害性活性を測定し,抗体併用群では非投与群に比し有意に抑制されていることも指摘している.しかし,そのトレランス誘導の機序については両論文ともに詳しい説明はされていない.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.