今月の主題 癌と免疫
担癌生体の免疫応答
EBウィルス抗体
阪上 賀洋
1
,
加藤 四郎
1
1阪大微研感染病理
pp.1010-1011
発行日 1979年7月10日
Published Date 1979/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215955
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はじめに
癌ウイルスの種類は多いが,自然発生癌に関連するウイルスの数はかなり限定されたものであり,レトロウイルス科(Retroviridae)に属するいくつかのRNA腫瘍ウイルスとヘルペトウイルス科(Herpetoviridae)に属するニワトリのマレック病(悪性リンパ腫症)ウイルス(MDV)とヒトのEBウイルス(Epstein-Barr virus,EBV)などである.このうち,EBVのみがヒトの悪性腫瘍であるアフリカBurkittリンパ腫(BL)と上咽頭癌(nasopharyngeal carcinoma,NPC)とに密接に付随して見出されている.したがって,最も容疑の濃厚なヒト癌ウイルスとして対応することは妥当であり,少なくともEBV関連抗原ないし抗体と,これら癌の関連性の追求は,診断学的にも極めて重要な意義をもつものとなっている.
EBVの動物モデルであるMDVと同様,EBVは自然感染により世界中のヒトの間に広範に水平伝達しており,成入の80%以上,本邦では90%以上がEBVに対する抗体を持っている.EBVの初感染は,本邦では約80%が乳児期に起るが,欧米などでは,この初感染年齢がずっと高く,したがってかなりのパーセントが思春期ないしは成人初期に初感染を受ける.この場合,感染者の約50%が伝染性単核症(infectious mononucleosis,IM)を発症する.
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