助産婦事典
産科領域とB型肝炎ウィルス
木村 好秀
1
1三楽病院産婦人科
pp.240-245
発行日 1985年3月25日
Published Date 1985/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206611
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はじめに
かつて輸血後にしばしば肝炎を発症したり,働き盛りの人が劇症肝炎で短期間に死の転帰をとることがあって恐れられていたが,その原因の本態は長い間不明であった。ところが,1964年Blumbergが頻回輸血患者の血清中に,オーストラリア原住民の血清と反応するある抗体を発見し,これに反応する抗原をオーストラリア抗原(Au抗原)と名づけた。その後,多くの学者の研究により,この抗原が肝疾患と深くかかわりのあることが明らかにされ,やがてこれがB型肝炎ウイルス(Hepatitis Bウイルス=HBV)の発見へと進展し,今やその実態が明らかとなってきた。
私たちのように産婦人科領域で働く者は,このHBウイルスの存在を無視することはできない立場にある。それは産婦人科の患者は出血を伴うことが多く,血液を介して水平感染の危険性のあること,HBs抗原陽性の母から児への垂直感染,キャリア化した児の肝疾患への進展と新たな感染源の誕生など,さまざまな問題があり,今やB型肝炎の問題は21世紀の国民病といわれ,これの撲滅に積極的な対策が具体化されようとしている。
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