今月の主題 悪性リンパ腫
総説
悪性リンパ腫とウィルス
渡辺 俊樹
1,2
,
吉田 光昭
1
Toshiki WATANABE
1,2
,
Mitsuaki YOSHIDA
1
1癌研究会癌研究所ウイルス腫瘍部
2現在東京大学医学部第4内科
pp.771-777
発行日 1985年7月15日
Published Date 1985/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912614
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はじめに
ヒトの悪性リンパ腫の中で,その病因としてウイルスの関与が考えられているものには,以前からEBウイルスとBurkittリンパ腫との関係が有名である.さらに最近では,高月らによって提唱された,西南日本に多発する成人T細胞白血病(ATL)が,ウイルスによって起こる白血病・リンパ腫として注目を浴びている.
ではなぜ,とりわけこのATLとHTLV-Iとの関係が人々の関心をひくのであろうか.
その理由の第一は,すでに,実験動物においてはウイルスが「癌」(広く悪性腫瘍一般を指す言葉として用いる)の原因となることが確立されているにもかかわらず,ヒトの「癌」でも同様のことが言えるのかどうかが確認されていなかったことによるものであろう.ウイルスがヒトの「癌」を起こすことが明らかになれば,化学発癌や放射線発癌のモデルに比較して,より直接的にヒトの「癌」における腫瘍化の機構の解析が可能になることが期待できるのである.また,これまで困難であった「癌」の予防を可能にし,さらにこれまでとは異なった,特異的な治療法をも可能にするかもしれないと考えられる.
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