今月の主題 臨床家のための輸血学
血液事業の実態と将来
山口 修秀
1
1献血供給事業団
pp.320-323
発行日 1979年3月10日
Published Date 1979/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215785
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はじめに
わが国において輸血が学会誌に紹介されだしたのは明治後期よりであるが,当初は家兎などについての実験結果についての考察である1),ヒトの血液に関する分類についてはLandsteiner,Moss,Leeらの研究に影響され,松原文四郎がその赤血球溶解および凝集反応について百数十人の実験結果を報告して2),これらの学説について立証している.
また,人体に輸血を実施したことの報告は大正8年頃より行われている3).大正8年九大の後藤七郎が輸血法の実施と現況について講演した記録によると,第一次世界大戦により1916年の後半より英仏軍において盛んに輸血が実施され,その効果が大きかったとしており,輸血に際しては供血者と受血者の血清,血球による凝集現象と溶血現象をあげている.彼の行った方法としては,注射器の中に10%〜20%のクエン酸ソーダ液を注入しておき,それに給血者の静脈より血液を採取し,次いで「ガーゼ」により濾過してのち患者静脈内に注入したとしている.
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