私の経験例
脳卒中発作により黄疸・腹水の消失した肝硬変の一例
内潟 雅信
1
1虎の門病院神経内科
pp.1969
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207567
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神経内科の領域では,CTスキャンの導入,神経化学,ウイルス学の進歩などにより,診療レベルが最近著しく向上しつつある.しかし,患者側からの情報があまりにも乏しい時はその診断に苦労することが少なくない.
患者は52歳男性.数年来の肝硬変のため常時,黄疸・腹水を有していたが,3年前突然脳卒中発作を起こした.発作後奇妙なことに腹水が消失し,また腹水より腫瘍細胞が疑われたため,それらの精査と発作後頻発するけいれん発作の治療を兼ね入院となった.神経学的には知覚障害を伴う右片麻痺を示し,強い関節拘縮もみられた.深部反射は右側で亢進し,Babinski徴候陽性,他に重度の失語(主に運動性)と失書・計算力低下などが認められた,発作が突発している点と心房細動を有することからまず脳塞栓を疑った.一般理学的には血圧100/70,脈拍毎分90(不整)で,頸静脈の著明な怒張,腹壁静脈怒張,足背浮腫および黄疸が認められた.なお腹水,肝脾腫は認められず肝機能上も肝硬変を示唆する所見は得られなかった.胸部X線より胸膜肥厚のほかに心陰影の中等度拡大,第4弓内側の石灰化が認められ,さらに心カテにて典型的なdip and plateauが得られ慢性収縮性心膜炎の診断が下された.
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