今月の主題 浮腫と臨床
内分泌・代謝性浮腫
肝臓性浮腫
多羅尾 和郎
1
1横浜市大第1内科
pp.1258-1259
発行日 1977年9月10日
Published Date 1977/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207357
- 有料閲覧
- 文献概要
肝(臓)性浮腫の特徴
肝性浮腫には下腿浮腫もあるが,最も典型的なものは腹水であり,これは肝硬変症非代償期の最も著明な徴候である.したがって,腹水の出現した人に,長年にわたる飲酒歴,または肝炎などの既往があり,現症でvascular spiderやpalmar erythemaや腹壁静脈の怒張などを認めた場合は,まず肝硬変症の腹水を考え,尿中ウロビリノーゲン,血液生化学検査などを行い,一方では,腹水試験穿刺を行って診断を確かめるべきである.
肝硬変症における腹水は他疾患の浮腫と比べて種々の点で異なっているが,これはその成因によるところが大きい.ここで肝硬変腹水の発生因子を考えてみると,①肝アルブミン合成障害による低蛋白血症,②再生結節などによる肝内血管の歪みから生ずる門脈高血圧症が2大因子と考えられ,ほかに③腹水時の循環血漿量の減少による高レニン血症が,angiotensinを介して起こすaldosterone分泌過剰と,肝でのaldosterone不活化障害とによるsecondary aldosteronism,④再生結節などによるpost sinusoidal blockの結果として起こる肝リンパの肝被膜よりの漏出,⑤腎血行動態の異常などの諸因子が考えられている.したがって,肝硬変症においてはネフローゼ症候群のような低アルブミン血症を浮腫の主因とする疾患に比べて,比較的高い血漿アルブミン濃度で浮腫が出現するのである.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.