今月の主題 癌治療の最前線
ホルモン療法
癌のホルモン療法の考え方と現状
加藤 譲
1
,
井村 裕夫
2
1神戸大第3内科
2京大第2内科
pp.1129-1132
発行日 1977年8月10日
Published Date 1977/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207316
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はじめに
1896年にBeatsonら1)は手術不能な転移性乳癌の患者に卵巣摘出術を行い,明らかな寛解がみられたことを報告した.Hugginsら2)は1941年に前立腺癌が睾丸摘出によって寛解することを明らかにした.これらの成績は,癌細胞は発生した正常な母組織の細胞と類似した性質を有し,乳腺や前立腺のようなエストロゲンやアンドロゲンなどの標的組織より発生した癌は性ホルモンに対する依存性を有すること,したがって,これらのホルモン産生臓器の除去が癌治療に有効なことを示唆する.
しかしながら,このような経験的事実より発展した乳癌に対する卵巣,副腎,下垂体摘除などのホルモン療法によって腫瘍の縮小が認められるのは,全体の20〜40%にすぎないことが明らかになった.一方ホルモンの作用機序に関する研究の進歩によって,ホルモンの作用する組織には特異的な受容体蛋白が存在することが知られている.ホルモン作用は受容体との結合によって開始されるので,癌組織におけるホルモン依存性を明らかにし,ホルモン療法を選択するためには受容体の検索が重要と考えられる.本稿では,とくに受容体に関して広く研究の進められている乳癌を中心に現況について述べてみたい.
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