診療手技のコツ
組織・細胞標本のつくりかた
金子 仁
1
1日医大老研基礎部
pp.1847
発行日 1976年12月5日
Published Date 1976/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206913
- 有料閲覧
- 文献概要
現在,病理標本を作るのは検査技師で,標本の診断をするのは病理医である.したがって,技師の"ウデ"と病理医の"メ"が対になって,はじめて適切な診断ができる.
私はかつて,国立東京第一病院病理に勤務していた時,国立病院臨床病理共同研究班の病理幹事をしていた.私がとり上げたのは,病理の特殊染色である.東一病理で同一の未染色薄切標本を全国国立病院に送り,特殊染色を施して私の所へ送ってもらう.私がそれを1枚,1枚点検し,点数をつける.そうして技師に送り返す.このような研究方法で,技師の技術の向上を図っていた.この時私は,「病理の標本は芸術」だと感じた.同じ標本を同じ染色法で染めて,でき上がりは月とスッポンほど異なるのである.技師の"ウデ"の違いをまざまざと見せつけられた.下手な標本で病理の診断がつけられるか,こんな気持ちで,私は技師の教育に熱心になった.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.