今月の主題 電解質異常のすべて
電解質異常の対策
GIK
宮下 英夫
1
,
佐藤 友英
2
1帝京大第1内科
2帝京大内科
pp.1548-1549
発行日 1976年11月10日
Published Date 1976/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206831
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GIK,すなわちglucose,insulin,K(potassium)の混合溶液が急性心筋梗塞の治療法として有効であることを提唱したのは,1962年,Sodi-Pallaresら1)である.すなわちイヌの実験的心筋梗塞にGIK療法を行い,心電図異常の早期改善,心筋K喪失の減少,Na,水分の蓄積減少,梗塞領域の縮小,梗塞領域心筋の酸化的燐酸化の効率上昇,梗塞部心筋収縮力の増強が認められたとし,臨床的にもGIK療法は急性心筋硬塞の経過を好転させ,不整脈の発生頻度を減らし,死亡率の低下をもたらすことを報告した1).
心筋梗塞による障害部,虚血部の心筋細胞は細胞内Kを喪失し,その静止電位は低下する(hypopolarization).GIK溶液はinsulinが細胞膜に働き,glucoseとKの細胞内とりこみを促進し,虚血によって失われた細胞内Kを正常化し,細胞内外K比の正常化により,正常分極状態(normal polarization)となる.さらに酸化的燐酸化を促進し,細胞内ATP,グリコーゲン生成能をも高める.すなわち,虚血による細胞障害を抑制し,不整脈発生のfocusとして働くことをより少なくするのがそのメカニズムであると主張した.このような意味から,GIK溶液は分極溶液(polarizing solution)ともよばれ,GIK療法はpolarizing treatmentとよばれることがある.
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