今月の主題 不整脈のハイライト
不整脈と電解質
宮下 英夫
1
,
佐藤 友英
1
1帝京大第1内科
pp.22-27
発行日 1976年1月10日
Published Date 1976/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206365
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はじめに
電解質の代謝異常が,各種の不整脈の発生に重要な因子をなしていることは,ある種のイオン,たとえばK,Ca,Mgイオンなどの心筋細胞への流入または流出が,単独でも,またそれらの組み合わせでも心臓の調律,心筋の興奮性,伝導性に大きな影響を及ぼすことから,十分理解されるところである.電解質の代謝異常は,洞房結節,房室結節,心房筋,心室筋などにそれぞれ特有な作用を及ぼすのみでなく,交感神経,迷走神経の機能にも影響を与え,これらがすべて不整脈の発生,進展に関与する.
一般に電解質の異常は単独のイオンの変化として起こることは少なく,多くのイオンの変化を同時に伴うことが多く,pHの変化や酵素系の異常,心筋の障害やその他の心外性障害などが共存している場合が多いので,ある種の不整脈の唯一の原因として,ある特定の電解質の異常を想定することは困難なことが多い.たとえばKの心臓に対する影響は心筋障害の程度によって異なり,老齢者では一般により過敏であったり,Kの効果はCa,Naの濃度によって影響され,Ca,NaはKに拮抗的に働くので,もしCa,Na濃度が低値を示すならば,同じK濃度でも強い影響を及ぼすことが知られている.このようなことから血清K濃度のみからK異常を考えたり,その相関をあまり重視することは,しばしば解釈をあやまる結果を招きやすい.
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