今月の主題 アルコール性障害のトピックス
アルコールの代謝とその生体に及ぼす影響
石井 裕正
1
1慶大内科
pp.1344-1347
発行日 1976年10月10日
Published Date 1976/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206764
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アルコールの生体内における代謝および代謝酵素系につて
エチルアルコール(以下アルコール)は,元来,生体にとっては異物であり,腸管内で発酵によって生ずる内因性のアルコールもごく微量に存在するが,量的には問題にならない.アルコールは,アルコール性飲料として経口的に摂取されると,胃および小腸粘膜より速やかに吸収される.いったん吸収されると体内のwater spaceに容易に拡散し,90〜98%は体内で代謝されるが,アルコールのままで体外に排泄される量はわずか2〜10%であり,それらは呼気,尿,発汗などによって排泄される.アルコール代謝の中心となるのは肝臓である.肝臓以外の臓器でのアルコールの代謝は胃,腎においてわずかに認められるが,量的には問題にならない.
さて,肝細胞におけるアルコールの代謝の第1段階は,アルコールが酸化されてアセトアルデヒドになる反応である.この反応を触媒する酵素には,古典的で最も主要なものとしてアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase:ADH)があり,さらに最近注目されている肝ミクロソームのエタノール酸化系(microsomal ethanol oxidizing system:MEOS)がある(図1).
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