トピックス
加齢のアルコール代謝に及ぼす影響
奥野 府夫
1
1奥野内科医院
pp.174-175
発行日 1992年2月1日
Published Date 1992/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900962
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加齢とともに諸臓器は萎縮・縮小し,重量は低下し機能も低下する.肝はアルコールを含む各種薬物の代謝の場であるので,肝も加齢によって代謝機能が低下し,投与された薬物の血中からの消失は遅延し薬理効果が十分でなかったり,逆に血中濃度が高く保たれ効果が増強したりする.
通常アルコールといえば2つの炭素を持った分子量46のエチルアルコールのことで,常温で水にも油にもよく溶ける薬物である.経口的に摂取されたアルコールは消化されることなく胃で20%,上部小腸で残りの80%が吸収される.胃腸からの吸収は胃内に食物,特に油物が入っていると遅く,“空きっ腹の一杯はよくまわる”と俗にいわれているように空腹状態では最も速い.消化管から吸収されたアルコールは門脈血に溶けて肝臓に運ばれ,一部は肝臓で代謝され,残りは心臓を通って大循環を通じて全身にいきわたる.前述したようにアルコールは水にも油にもよく溶けるので,全身諸臓器にほぼ等しく分布し,その濃度もほぼ等しい.まさに「酒は五臓六腋にしみわたる」のである.ほとんどの薬物は肝細胞中のミクロゾーム分画にある薬物代謝酵素系で代謝されるのに対して,同じ薬物でもアルコールは少し異なり,その大部分はサイトゾール分画と呼ばれる可溶性分画中にあるアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase;ADH)という酵素によって酸化され,通常,ミクロゾーム中のアルコール代謝(MEOSという)の関与は大きくない.
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