今月の主題 アルコール性障害のトピックス
アルコール中毒症における臓器障害の位置づけ
小片 基
1
1札幌医大神経精神科
pp.1342-1343
発行日 1976年10月10日
Published Date 1976/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206763
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アルコール中毒はいうまでもなく,一般に急性中毒と慢性中毒に大別されるが,前者が臨床的に問題にされることはきわめて少ない.慢性アルコール中毒(Alcoholismus chronicus)の用語を最初に記載したのは,スウェーデンの内科医Huss, M.(1849)である.Hussは慢性アルコール中毒を次のように定義した.すなわち,慢性進行性疾患で精神的・身体的障害をもたらしアルコールに対する依存性が強い.Hussの著書はその後欧米の学者に少なからぬ影響を与えることになったが,Alcoholismus chronicusという言葉の背後には,アルコール飲料の常識的飲み方が不可能になる状態という心理的な意味と,アルコールという「毒物」ないし「中間毒性産物」に起因した生体の中毒症状という2つの意味が含まれていた.このことは前者がたとえばBleuler, E. の飲酒嗜癖(Trunksucht)概念として導かれたことに,後者はアルコール性精神障害が中毒性精神病として扱われてきたことにあらわれている.しかし,1964年,WHOの依存形成薬物に関する専門家会議において,依存形成物質は7型に分類され,アルコールはbarbiturates,rninortranquilizerなどと同類の依存形成物質に組み入れるべきであると結論された.この決定は,本来困難とされた慢性アルコール中毒概念の確立にひとつの新しい局面を提示することになった.
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