図解病態のしくみ
肝炎慢性化の機序・2—肝線維化を中心に
亀谷 麒与隆
1
,
丸山 勝也
1
,
船津 和夫
1
1慶大内科
pp.536-537
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206525
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肝炎慢性化の機序につき,前回は,肝炎ウイルスと宿主の免疫能を中心に持続性肝細胞障害の機序につき述べたが,今回は慢性化のもうひとつの要因である肝の線維化,すなわち結合織増生が肝炎慢性化にどのような役割を果たしているかにつき検討してみることとする.
肝においては瘢痕の形成・線維性隔壁の形成が肝内循環障害を助長し,さらに肝細胞周囲の線維化と,それに伴う類洞の毛細血管への変貌は肝内血流の短絡など肝内微小循環系の異常を惹起して,肝細胞への著しい血流減少とともに血液-肝細胞間の物質交換の阻害を招き,その結果,肝細胞傷害は増悪し,線維化はさらに進行するという一種の悪循環に陥り,肝傷害が進展すると考えられる.このように類洞の毛細血管化,すなわち類洞直下の基底膜の形成は,肝炎の慢性化さらには肝炎の進行の重要な因子と考えられ,したがって基底膜形成の機序を知ることは肝炎慢性化の機序を窺う上に重要である.そこでここでは,実験的ラット肝線維症をモデルとした基底膜形成過程について,基底膜の形成に密接な関係があるcollagen fiberと酸性ムコ多糖の変化をとくに基底膜形成のみられるDisse腔付近において観察した所見と,それらの分解酵素であるlysosome酵素およびcollagenaseの活性の推移とを比較して述べる.
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