今月の主題 内科医に必要な末梢血管病変の知識
血流の生理と病態
沖野 遙
1
1東海大生理学
pp.312-313
発行日 1976年3月10日
Published Date 1976/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206449
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血流から何がわかるか
血流というと,流れの様相(脈動血流波)と流れる量(血流量,ml/min)の2つが問題になるが,これらからは流入血が末梢の代謝や交換にどう役立ってでてくるかはわからないので,生化学的組成の分析が不可欠である.すなわち,生理的な短絡に加え,最近は人工的短絡路の作成やこの短絡路内での物質交換も行われるので様相が複雑化した.
ヒトの場合,心臓ポンプ作用で脈動性の圧と流れが生ずるが,これは,心臓の対外仕事は①限られた拍出期に最終的に全身末梢血流量の維持のための心拍出量と,②拍出期以外の時間内に拍出量が全身に分布できるだけの圧差エネルギーを,大動脈基部壁をふくらませてその壁内張力に移すという2成分からなる.そしてこの壁内張力が内圧を維持し,末梢との圧差によって血液を流す.通常の静水流の場合の位置のエネルギーの差がこの圧差に相当するが,ヒトでは刻々圧差が脈動して変化するので,血流は定流速ではなく,脈動流速変化を示す.電磁血流計や超音波血流計による脈動流速変動は,動脈壁の形状や弾性と末梢での血流抵抗の組み合わせで大幅に変化するので,脈動血流波から,その測定部位と狭窄部位との位置や程度の関係と,末梢血流抵抗の増減関係とが判定できる.これに加えて血流量の定量測定を行うと,前述の流入出量の関係のみが客観的に判定される.さらに血流の場合,心拍出量の全身分布量を知ることははなはだ重要である.
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