今月の主題 甲状腺疾患のすべて
臨床的アプローチ
触診法とそれによる鑑別診断
伊藤 國彦
1
1伊藤病院
pp.1356-1359
発行日 1975年8月10日
Published Date 1975/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206171
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はじめに
筆者の病院に来院する甲状腺疾患の約85%は既に甲状腺腫に気付いている.他の15%は甲状腺機能の異常による症状を主訴としているものである.中には頸そのものがふといことを気にしている場合があるが,ほとんどの患者は間違いなく甲状腺腫を有している,甲状腺腫は本入が最初に気付く場合が多いが,家族や周囲の人から指摘されることも稀ではない.すなわち甲状腺腫は素人でも容易に発見できる所見である.しかし,中には大きな甲状腺腫を持っていながら気付いていない入もある.顔と違って頸は案外観察を怠る部分であるらしい.もっとも視覚的に甲状腺腫をとらえる可能性は頸そのものの型状に左右される。ほっそりした長い頸では小さい甲状腺腫でも目立つが,ふとくて短い,いわゆる猪くびの人では大きい甲状腺腫でも分からないことがある.
甲状腺腫はもちろん医師により発見される場合がもっとも多い.とくに機能亢進症状が明らかで,これらの症状から類推して甲状腺腫を確認して診断が決定されることが多い.しかし,たまたま他の疾患で来院した患者の診察時や,身体検査で発見されることも少なくない.
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