今月の主題 甲状腺疾患のすべて
甲状腺ホルモンをめぐって
甲状腺ホルモン結合蛋白とその異常
紫芝 良昌
1
1虎の門病院・内分泌学科
pp.1318-1319
発行日 1975年8月10日
Published Date 1975/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206158
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はじめに
甲状腺疾患を診断する場合,検査の最初の手がかりは血中甲状腺ホルモン濃度のうちで組織の代謝に密接に関連する部分を測定することである.甲状腺ホルモンは,T4にしてもT3にしても,大部分が血清蛋白(とくにTBG,TBPA,albumin)に結合しており,血清蛋白に結合していないホルモン(free hormone)が組織の代謝に密接に関連している.したがって,もし血清中にある甲状腺ホルモン結合蛋白が一定不変であれば,血中の甲状腺ホルモン濃度を測定しただけで,組織の代謝状態を反映するホルモン量を推測することができるけれども,もし血清中の甲状腺ホルモン結合蛋白に変化があれば,血中の甲状腺ホルモン濃度を測定しただけでは組織の代謝と関連のあるホルモン量を推測することは不可能なことになる.このような血清中の甲状腺ホルモン結合蛋白の異常が非常に稀であるということであれば問題は少ないが,実際の臨床では,種々な疾患により,あるいは用いている薬剤により,あるいは先天性の異常により,血清中の甲状腺ホルモン結合蛋白は変動するので,血清中の甲状線ホルモンに関するdataを正しく解釈するためには,血清甲状腺ホルモン結合蛋白に関する知識が不可欠である.
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