今月の主題 血液ガスの基礎と臨床
血液ガスの臨床
急性呼吸不全
岡安 大仁
1
1日大第1内科
pp.176-177
発行日 1975年2月10日
Published Date 1975/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205774
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概念と基準
急性呼吸不全(ARF)は,ご承知のように臨床上多くの疾患でしばしば認められ,しかもその診断と処置は一刻を競うものである.ARFを一言でいえば,呼吸器および心臓機能の一方あるいは両者の急激な障害で,動脈血の酸素化状態と炭酸ガス排除が正常にいかなくなった場合である.もちろん,ARFの最終的な意義は,組織への酸素の供給と炭酸ガス排除の急激な減弱ということではあるが,組織のガス張力を測ること自体,極めて困難であるので,動脈血ガス分析によってARFの存在とその程度とを推定するわけである.研究者によってある程度の差はあるが,ARFを確診しうる動脈血ガス分析値は,Pao2が50 mmHg以下になった場合である.この場合,炭酸ガス蓄積を伴うものと,伴わないものとがあって,Paco2が急激に50mmHg以上になった場合を,とくに急性換気不全acute ventilatory failureという.ARFが単に低酸素血症だけなのか,あるいは過炭酸ガス血症を伴っているのか,すなわち急性換気不全であるのかを鑑別すること(これは臨床症状だけでは困難で,むしろ誤診しやすい)は,ARFの治療上極めて重要で,動脈血ガス分析が不可欠なものとなる.
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