今月の主題 血液ガスの基礎と臨床
血液ガスの臨床
慢性呼吸不全
芳賀 敏彦
1
1国療東京病院・外科
pp.178-179
発行日 1975年2月10日
Published Date 1975/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205775
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慢性呼吸不全の定義は,急性呼吸不全のそれと併せて慢性・急性の点においては未だ明確ではない.しかし急性呼吸不全はどちらかというと外傷.ショック,手術中,中毒などのように,それまで呼吸器系に変化がなくて起こった急激な呼吸不全をさすので,慢性呼吸不全は基礎に慢性の呼吸器疾患(単に肺・胸郭に限らず,神経系,神経筋系の障害を含めて)を持っている者が,長期間にわたる漸進的な機能低下により自覚的には,労作時息切れより始まる呼吸困難を覚えるようになり,一方,動脈血ガス分析では正常値から脱しているものを慢性呼吸不全としてよいのではなかろうか.ただ患者が医師を訪ねる場合は,よほど重症化してからか,または一時的・急性増悪で症状悪化した時が多い.後者の状態はいわゆる慢性呼吸不全の状態に急性増悪がスーパーインポーズしているので別に考えねばならない.こうしてみると,慢性呼吸不全も慢性安定期と急性増悪期の2期に分けて考えた方がよさそうである.
このような慢性呼吸不全を呈する基礎疾患はたくさんあるが,筆者らの所で取り扱っているのは慢性肺気腫,慢性気管支炎,喘息の重積したもの,肺線維症,じん肺,肺結核をはじめとする肺感染症の後遺症と,肺に直接関係のあるものが多い.
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