ある地方医の手紙・23
「けんじょも喰いてい!」
穴澤 咊光
1
1穴澤病院
pp.822-823
発行日 1974年6月10日
Published Date 1974/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205472
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W先生
米国の病院で珍しく思ったものにpastoral careという制度があります.入院すれば誰もが不安と孤独に苛まれるのが人の世の常,そこで牧師さんが病人のベッドサイドを渡り歩いて患者の話相手になってやり,精神的慰めを与えるという,いかにもキリスト教国らしい発想による制度なのです.日本でも,このごろ,この制度を模倣しようとする動きがあるようですが,さてどんなものでしょうか?宗教に関心が薄く,仏教も神道も冠婚葬祭のためだけに存在しているような,わがエコノミックアニマルの経済「大」国の病人のベッドサイドを,坊さんが珠数をつまぐりながら渡り歩いたら一体どんな反応がおこるでしょうか?容易に想像できよう,というものです.たいていの患者は,「エンギでもない!俺の葬式の下準備にきたのか!俺は医者の世話にはなっているが,まだ坊主の厄介にはならん.とっとと出ていけ!」などと激怒するでしょうし,大体が看護婦にも十分な給料も払えず,十分な人数もそろえられない健保制度下の病院では,pastoral careなんてとても高嶺の花,法外なゼイタクとしかいいようがありません.
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