ある地方医の手紙・9
「死んでも医者さ行がね」(一)
穴澤 咊光
1
1穴澤病院
pp.394-395
発行日 1973年3月10日
Published Date 1973/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204669
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W先生.
「所変われば品変わる」とは実にうまいことを言ったものだ,と最近つくづく思うことがあります.私が東京の大学の医局員だったころは,毎週外来で,しつこく不定愁訴をくどくどと並べたてる,心身症的,疾病恐怖症的な患者の大群に悩まされていたものですが,当地での目下の最大の悩みは,当地の方言でいうなれば「なんぼいってくっちぇもわかんねい(全く話のわからない)」頑迷医療拒否型の患者であります.当然のことながら,こういった患者は女より男に多く,都市部より郡部に多く,ある種の新興宗教の信者や教育程度の低い高齢者に多く,全くハシにも棒にもかからず処置に困ることがあります.とくに一番閉口するのは,即刻入院を要する重症患者が「医者さ行ぐくれいなら死んだほうがエエ」と往診先で駄々をこねる場合です.こういったワカラズヤの患者に私が散々ふりまわされた話を1ついたしましょう.
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