ある地方医の手紙・11
留置場への往診
穴澤 咊光
1
1穴澤病院
pp.662-663
発行日 1973年5月10日
Published Date 1973/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204749
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W先生.
夜中の往診は辛いものですが,なかでも警察署の留置場(いわゆるブタバコ)への往診は,私にとって最も有難くないものです.というのは,留置場というところは実に気色のわるいところだし,患者が重患だったりすると色々厄介なことが多いし,たまたま患者が死んだりすれば遺族が怒鳴りこんできたりして,とんでもないトラブルにまきこまれるし,それに留置人の大半は暴力団員またはそれに類するような人種で,まず診療費は踏み倒されるものと覚悟しなければなりません.それどころか,こういう人種を患者にもつと,保釈出所後金をタカリにこられたり,ささいな疾患を理由に「刑の執行を免除して貫うように診断書を出してくれ」なんて外来で粘られたり,およそロクなコトはないからです.
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