診療所訪問
患者のニードから守備範囲をきめる—医療法人社団一ツ橋診療所長 守屋美喜雄先生を訪ねて
編集室
pp.820-821
発行日 1974年6月10日
Published Date 1974/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205471
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貧民街の診療所で
—先生は昭和26年に慶応を卒業されて,すぐにスラム街にとびこまれたそうですが,当時のことを伺いたいのですが.
守屋 当時のことは恥ずかしいので,あまり話したくないんですけれど,実は私,卒業する当時とインターンの終わり頃にスランプになりまして,はたして自分は医師として適格な入間かどうか迷っていました.その頃,慶応の衛生学教室にしばらくお世話になりましたが,いろいろいきさつがあってとび出しました.たまたまスラム街みたいな所の診療所にいた友人に,医者になるべきかどうか迷っているなら,とにかく,こういう所に来てやってみうといわれ,当時はまだ焼トタンの家なんかでしたが,それを1日に10軒も20軒も往診するような所に行きました.畳もなく電灯もつかないバラックに,ムシロを敷いて両肺穴だらけの肺結核患者がねていたりして,往診に行くと喜んで,かけた茶椀に水みたいなお茶をいれて,漬物を手のひらにとってくれたりするんですね.そういう仕事の中で,自分のような人間でも人のために役立つことができるんだなと感じて,医者になったわけです.
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